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何もいらない





「こんにちは〜!」

「いらっしゃい、太乙」

寒い日が続く中、今日は珍しく小春日和で暖かい日差しが崑崙山にも降り注いでいた。

こんな日は実験がしたくなる、といつにもましてやる気を持って薬品達と向かい合っている最中、いつもの客がやって来た。

こんなこともあろうかと、突然の来客に慣れてしまった雲中子は、お茶を沸かしておくのを欠かしたことがない。

太乙は勝手知ったる、という様子で洞府にあがりこんでは、適当にカップを見繕い、お茶を注ぐ。

実験で手が空かない雲中子に対しては、一見非常識に見えるこの動作は最高の礼義ともいえる。

お茶の入ったカップを両手で包みこみながら、太乙は雲中子の真向かいに座った。

「今日はどんな実験してるの?雲中子」

「秘密」

これは、太乙が玉柱洞にやって来た時の一連の会話。

いつだって実験の内容は完成してからでしか他人には教えない。

それでも太乙は興味深そうに雲中子の手元を覗きこむのだった。


しばらくそうして沈黙の時間が過ぎ去ってから、雲中子がなんの前触れもなく口を開く。

「太乙はいつもうちにくるね」

「暇だからね〜」

「暇だとうちに来なければならない、というわけじゃないだろう?どんな些細な理由でも、目的がない限り人は行動しないんだよ」

そう言われて、太乙はうーん、と低く唸った。

「うーんとね、雲中子の実験は面白いし、あとはね…」

そう言いかけて、物静かな洞府にぐぅ〜、という低い音が響き渡った。

「出てくるご飯がおいしいの!」

「…はいはい、ご飯ね」

雲中子は呆れ気味にため息をつき、試験管を試験管立てにおいて台所へ向かった。

台所が見える椅子に座り、両手で頬づえをつきながら、太乙は見慣れたその後ろ姿を眺める。

雲中子は、料理中ことある毎に太乙に質問した。

「太乙、カロチン入り赤色根っこと食用西洋唐辛子とどっちが好き?」

「えーなにそれー?」

「人参とピーマン」

「どっちも嫌いー」

「好き嫌いは相変わらずかい?成長しないね、太乙は」

くすくす笑いながら雲中子は調理を進める。

太乙は、思うところがあったようで、ふと雲中子に疑問を投げかけた。

「雲中子って、そういう生物とか研究してて、食欲なくなったりしない??」

「そうだねぇ…仙人で良かったと思うことはあるよ」

料理の手を止めることなく答える。

「どうして?」

「どうしても解剖やその他でさまざまな動物の側面を知らなければならなくなるから、なまぐさを食べるということに関してひどく嫌悪を覚えるんだ。
 仙人であれば、なまぐさを食べなくても生きていられるからね」

「そっかぁ。私は、趣旨は違うけど研究をしてて熱中してるときは他に何もいらない気がするときがあるんだけど」

「生物は、得てして何かに興味を持つと、他に手を回せなくなる習性を持つからね」

はい、と出来上がった料理を皿に盛り付け、太乙の目の前に置いた。

エプロンを外し、雲中子も太乙の目の前に座る。

「雲中子は、そういうことないの?」

出された料理を美味しそうにほおばりながら、純粋な目で再び問いかける。

雲中子はわざとらしくため息をついてみせた。

「あるよ。わたしの場合、それ以外、研究も食事もいらなくなる時がしばしば訪れる」

「え?研究も??じゃあ何に興味があるのさ」

その問いかけに、雲中子はシニカルな笑みを浮かべ、新たなイタズラを思いついたような表情をした。

「目の前に居る君。」

その言葉に太乙はぴくっと反応をした。

その反応を楽しみつつ、雲中子は料理に箸を伸ばす。





そう。他に何もいらない。

そう思ってしまうのは何故だろうね?






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とうとう書いてしまった…雲乙…
カップリングは書かないと決めていたのに!!
でもこの二人のほのぼのって和むのよね〜ww
雲中子好き〜w色物のやり取り大好き〜w
太乙のわがままに付き合ってしまう雲中子が好きなんですw