prohibition!





心地よい風が大地にしげる草花を撫でていく、そんな日和。

邑姜は気まぐれに、羌族の村にいる養父の元に遊び(?)に来ていた。

遊びに来たからといって何をするでもなく、悠々と過ぎ行く時間を読書に注ぎ込んでいたところ、一人の客が訪れた。

「…あら、さん」

「久しぶり。邑姜」

は邑姜の養父にとって、一番足繁く通いに来る人物であった。

邑姜が養父の客人を前に、気を利かせて腕輪にある会話用ボタンを押そうとすると、はそれを制した。

「いいの、こっちから行くから」

はそう言うが早いか、さっさと邑姜の隣に転がる宇宙服さながらのスーツの脇に寝転がった。

数秒してすぐ寝息が聞こえてくる。

邑姜は、そんなをしばし見下ろしてから、読みかけの本に再び目を戻したのだった。




…そしてこちら、夢の中。

「聞いてよ、老子〜!」

「人の夢に入り込むなり、何だい、?」

眠そうに目を擦る老子を前に、は「だって話すことがあるから来たんだもん」と膨れっ面。

「十二仙に選ばれそうなの!」

「…良かったじゃない」

あくびと共にそう答える老子に、は反発した。

「良くないっ!!なっちゃったら、暇が減って老子のとこあんまり来れなくなっちゃう!!」

「…私としてはその方がありがたいのだけど」

「あ〜、聞こえない〜っ」

「…。」

本来なら喜ぶべきところだが、どうやらにとっては、そうもいかないらしい。

「嫌なら、断ればいいじゃない」

無理に任命されるほど、崑崙が人手不足とは思えない。

「嫌、といえば、嫌なんだけど…」

そう言うと、はもごもご言って、続きが聞き取れない。

どうやら、一概に嫌とも言えないらしい。

「どうしたの?」

「…十二仙になれば、名目的に老子にちょっと近づくかなー、て」

老子にはの意図するところが分からない。

ねむいからかな、なんて思ってみたり。

確かには名目上、一介の仙人と立場は変わらないが、強さは仙女の中では竜吉公主に次ぐと評判である。

それなのに今更、名目を気にするというのは、やはり十二仙という肩書きが不意に舞い降りて、心が揺らぐ為だろうか。

老子はいつものぼんやりとした口調でぽつりと言った。

「禁止」

「…は?」

話の脈絡が掴めないは、目をぱちくりとさせて老子を覗き込んだ。

老子は、調子を変えずに続ける。

は、十二仙になるにはまだ不十分だから、私が禁止するよ」

「えぇ〜?」

いくら十二仙にはちょっとなりたくないと思っているとはいえ、不十分と言われるのは面白くない。

「どうしたら、一人前だって認めるの?」

「そうだなぁ…
…じゃぁ、が眠らずに私を起こせるようになったら」

ちょっとの間、考えてからそう答えるとは、にいっと不敵に笑った。

「言ったわね。やってやるわ!」

そう言い放つと、そのまま調子良く去っていった。



その後が、特製兵器を作製してやって来る事を予期すらしなかった老子は、今はただ、すいよすいよと夢の中で幸せそうに眠るのだった。










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覚醒君を発明したのは、実はヒロインだったという裏話(?)。
もしかしたら邑姜かもなぁ。完全版・封神なんでもQ!の時の経験をバネに!
この話書いてから、望ちゃんに覚醒君を使用した場面で老子が覚醒君誕生に対する怨念を籠めてるように見えてきた(笑)
この話の後普賢が十二仙に、という流れだったり。