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良薬口に甘し?





夜も深まろうかという頃。

ちょっとした実験が一段落したところで、そろそろ寝るか、と雲中子は実験用具を元ある場所へ戻したりしていたところだった。

…コン、コン。

しんと静まり返っていなければ聞こえないほどの、弱弱しい音が、雲中子の鼓膜を震えさせた。

こんな時間の来客も珍しい、と扉をあけると。

「…あ、うんちゅうしぃ〜」

?どうしたんだい、こんな時間…」

に、と雲中子が言い終わる前に、来訪者はふらりと体をよろけさせると、そのまま前のめりに倒れこんでしまった。

あわてて雲中子が抱きとめる。

戸口にそのまま佇むわけにもいかず、雲中子はを抱えながら洞府の中へ戻って行った。




「まったく、こんなに衰弱してる状態で、こんな時間帯にここまで歩いてくるなんて!」

信じられない、とぼやきながらソファにぽすん、とを横たえる。

「のどが痛くて、ぼーっとするの」

「風邪だね。見るからに」

寝たままで雲中子を見上げながら、はそう答えた。

雲中子は布団から持ってきた毛布を掛けてやりつつ、呆れ顔でため息をつく。

は、自分で言ったようにぼーっとした様子で必死に状況説明をする。

「あのね、なんか体調良くなかったから、どうしよう〜って思って、とりあえず、雲中子のとこ行かなきゃって、思ったの」

「はいはい。でもこんな時間、夜目が働くわけでもなしに外に出るなんて、落ちたりしたらどうするんだい?今度からは朝まで寝て、明るくなったら呼ぶんだよ。
 決して自分で来ようとしないこと」

「はぁ〜い」

全く、と口の中で呟きながら、雲中子は風邪薬の瓶を棚から探し出した。

匙と水の入ったコップも一緒に持ってくる。

「はい、口あけて」

「もしかして、粉薬?」

「もしかしなくても、粉薬」

「…甘いのない?それか錠剤」

「無いよ」

そう聞くと、はごろん、と寝返りをうってむこうを向いた。

「やだ。粉薬きらい」

「飲まないと良くならないよ」

ほら、と言って匙を頭越しに口元へ持っていくと、むくれた声で抗議が返ってくる。

「雲中子なら、甘い風邪薬くらい作れるでしょぉ!?」

「まあ、作れるけどね。薬は苦くないといけないんだよ」

「なんでっ!!」

むきになって大口を開けたところで、雲中子はすかさず粉薬を放り込む。

は口を開けなくなり、飲み込めもせず、涙目でこちらを見返してきた。

「だって、」

その様子を眺めつつ、雲中子はコップの水を口に含み、そのまま口移しでにごくり、と飲み込ませた。

は、ごくん、と薬をのみこんでから、一気に耳の先まで真っ赤にゆであがり、毛布を顔の上までたくしあげた。

雲中子はいつもの笑みを顔に浮かべる。

「…甘かったら病気治したくなくなっちゃうでしょ?」

「…;;」

「まったく、悪い患者さんだねぇ」

薬の瓶のふたを閉めながら、雲中子はわざとらしくため息をつく。

「こんな夜中に、そんなに衰弱しきって目もうるみがちな状態でうちに来て。薬を甘くしたくなっちゃうじゃない」

「…だって雲中子、お医者さんじゃない…」

体調が悪くなったからとお医者さんのとこへ行って何が悪い、とぶつぶつぼやく。

「そうだけどね。私に常識を説かないでもらいたいな」

いまだ布団から顔を出さないの手を掴み、ゆっくり目元まで下げさせて、ねえ、と呼びかける。

は、甘い薬が欲しいかい?」

「…欲しい…かな」

真っ赤なの顔を見て、クスクス笑いながら、雲中子は瓶や匙を手に持ち、立ち上がった。

「なら、早く治すことだね」

「…イジワル」

布団と手の隙間から見える雲中子の背にぼそっと呟いて、はそのままゆっくりと眠り始めるのだった。





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甘い〜;;
今まで「甘いのはどうしても書けない」と喚いていた水乃が、とうとう人並みに甘いものをぉ〜;;
いやでもね、口移しって一度でいいから書いてみたい、っていうか、されてみたい?(暴走。)
思ったんだが、雲中子夢は、ヒロインの名前太乙にしたら雲乙でいける。(汗)