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太乙真人による親バカ日誌。





玉虚宮。

どたどたと足音が響いて勢いよく戸が開けられる。

「ねえねえ、聞いてよ太公望!うちのナタクったらさぁ!!」

いきなりの来客に驚いた太公望は跳ね起きて、来客の存在を確認する。

「…むぅ?太乙ではないか。いきなり飛び込んできて何を騒ぎたてておる」

昼間から修業をさぼって昼寝を決め込んでいた太公望のところに息も切れ切れで駆け込んできたのは、乾元山に住む崑崙十二仙の一人、太乙真人であった。

慣れない運動をして乱れ気味な呼吸をある程度整えてから、太乙は堰を切ったように話し始める。

「こないだね、道徳からを預かってきたじゃない?それで、ナタクと遊ばせてたのさ!そしたら…」



―数日前のこと。

ナタクはを背中に乗せて、乾元山の辺りをぐるぐると旋回していた。

はきゃいきゃいと嬌声をあげて喜んでいる。

そこへ、太乙が宝貝の調整をしに、道具一式を持って近くの山に登ってきた。

数分後には、例のごとく凄まじい轟音を立ててドリルだの金槌だのを使い、巧みに宝貝を改造していく。

もちろん、愛用の保護メガネもばっちり着用済みだ。

ナタクには慣れ親しみすぎた光景だったが、仙人界へやってきたばかりのにとっては、物珍しいことこの上ない。

は、くんくんっとナタクの髪の毛を引っ張って、山に下ろすように催促した。

ナタクがそれに従って無言で山に降り立つと、はさっさと背中から降りて一目散に太乙のほうへ駆けだす。

太乙はドリルの轟音で全く気づかぬようだ。

ナタクはそれに気づいて、いそいでを追いかけた。

あと少しでドリルに突っ込もうかというところまで走って行ったところで、やっとのことで追いついたナタクに止められてしまう。

「ん〜ん!」

はナタクの腕を振りほどこうとして体をあっちやこっちへ捻って、どうにかして逃げられまいか、ともがく。

ナタクはなんとか止められたことに、どこかホッとしている様子。

は、どうもがいても逃げられないことに、ぷぅっとむくれてナタクのほうを振りかえった。

「おにいちゃま、はなちてっ!いじわるっっ!!」

「…だめだ」

「どうちて?」

「触ると…危ない。ケガをする」

ナタクがそういうと、はふと大人しくなり、ナタクの足元から顔をぐいっと覗き、じぃっと見つめてからにぱっと笑って見せて、

「わかった!」

と答えた。

まあ、その頃には太乙もそのほのぼの兄弟物語に見入っており、すっかり手を止めていたのだが。




―その数日後。

はるんるん機嫌よくお散歩をしていた。

ナタクはその後ろから等間隔置いてついてくる。

この日は日差しがぽかぽか柔らかく、あまりに気持ちの良い日和だったから、は途中で調子にのって、小さな足でとてとてと走り始める。

受ける風と日差しが心地よく、いつもより早く流れる周りの風景を見まわしながら、大はしゃぎで走っていた。

と、その時。

足元にナタクも気づかなかった大きなくぼみ、いや、くぼみというには高低の差が少々ありすぎる段差には落ちてしまった。

それも顔から突っ込んでしまい、さすがに天然道士といえど、これは痛かったようで、は初めうるうると目を潤ませながら、しまいには、わあわあと泣き出してしまった。

ナタクがすぐさま近寄り、あやすために背中に乗せてやろうとするが、泣きわめいて応じようとしない。

無表情のなかにもオロオロというような表情を含ませたナタクだったが、ハッと、太乙に言われた『もしが泣いちゃってどうにもならなくなっちゃったら、これをあげるんだよ』という言葉を思い出し、その時に貰った棒つきキャンディを取り出してずい、とにさしだしてみる。

「…食べろ」

お兄ちゃんのいつもよりやさしい口調に、は少し泣くのをやめて、差し出されたキャンディを見つめ、受け取った。

キャンディを受け取ると、それまでの泣き顔がウソだったかのように、曇りひとつない笑顔を見せる。

「あいがとっ、おにいちゃま!!」

「…ム」

こくり、とうなずいたナタクの表情は、どこか嬉しそうに見えた。





「――ねっ!!?成長しただろうっ、うちのナタク!!『触ると危ない』とか、そういうことも言えるようになったんだよっ!!キャンディを渡すところなんか、世紀の大瞬間だったんだから!!!まぁ、私はそれを期待して、ナタクにキャンディを持たせたわけだけどね!」

「うぅむ、相変わらずの親バカぶりだのう;;――…む?」

話し出すと止まらない太乙の親バカ加減に半分呆れていた太公望だったが、ふと遠くのほうで、何かを見つけた。

「あやつは…李靖ではないか」

「おや、本当だ。あの様子からすると、また度厄真人から逃げてきたようだね」

「あやつ…修業をし直すといいながら、相変わらずの体ではないか;;」

「あっ、ねえ、太公望、うわさをすればだよ!」

そう言って太乙が指さす方向をみると、成程、確かにを背中に乗せて散策中の様子のナタクが。

そこらへんを飛び回っているうちに、偶然通りかかったのだろう。


「…あっ!おとうちゃま!」

「ム?」

が声をあげて指さす方をナタクが見ると、確かに李靖の姿。

李靖もの声に気付いたようで、こちらを振り向いた。

「…げっ!」

李靖は、一瞬にして自分の愛娘が自分の化け物息子にあやされる図を理解した。

「おとうちゃま!おとうちゃま!」

じゃないか!なんでこんな奴の背中なんかにのってるんだ!落されでもしたらどうする!」

李靖は、ぐい、とばかりにをひっつかむと、ナタクの背中から引きずりおろした。

「ほうら、これで大丈夫だぞ」

満足げな父親の顔を、は初めこそきょとんと見つめていたが、状況を理解するや否や、あっという間に大声で泣き始めた。

「なっ!??ど、どうした!!?」

「ふぇ〜っっ!!おにいちゃまっ、おにいちゃまっっ!!」

両手をナタクのほうに向けて、李靖の腕から逃れようとせんばかりに身を乗り出した。

それを見てナタクが困惑色をわずかに見せつつ、ずい、と腕を差し出してみせると、は大声で泣いたままナタクの腕に飛び込んできた。

李靖はそんな愛娘をぽかん、と見つめている。

ナタクは、大声で泣き続けるになんとなくオロオロした様子だったが、ほどなくしてが落ち着いてくると、ナタクもまた、ほっと胸をなでおろすような素振りを見せるのだった。




「…どうやら、立派なお兄ちゃんのようだのう」

「あたりまえだよ。私の自慢の子なんだから」

三人の様子を玉虚宮から眺める二人は、そのやりとりを見てナタクの成長ぶりを実感するのだった。









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親バカっていいですよねww
子供に振り回されるナタクがかわいすぎてなりませんwww
そして親バカな太乙もかわゆすww
乾元山師弟って本当にかわいいなぁ、なんて思いながら、久々に妄想を詰め込んで書いてみました♪